DOG STAR MAN
デジタル技術を凌駕する、めくるめくフィルム映像トリップ!
ブラッケージのパーソナルな視点は、光と闇のなかから時空間を経てミクロからマクロの宇宙感へと我々を誘う。完成から30数年を経た現在でも、世界中のフィルム·メーカや多くの芸術家の間で語り継がれている『DOG STAR MAN』が、プレリュードから始まる全5章の完全版、ニュープリントでいよいよ劇場公開される。1971年には第3章が税関の検閲で輸入ストップされ、草月ホールで上映できなかった幻の傑作。
伏とともに雪山を登る男>という象徴的なイメージを中心に多重露光、コマ撮り、フェードイン·アウト、スクラッチ、フィルムの腐食などのあらゆるフィルムテクニックを駆使し、人間の生や自らの存在を視覚的に問いかける、神話詩的映像作品。コロラド山中の自然、夫婦間のSEX、出産、赤ん坊の成長する姿などの映像が散りばめられ、生活と撮影が一体となって映画が生まれてくる。無声映画時代を除いて、全編まったく音の無い映画がロードショー公開されるのは日本の映画館で初めての試みであろう。サイレントについてブラッケージは「調和した音楽がもたらす効果はその音楽のリズムが持つビジョンやトーン、感覚のイメージに当然のように結びついてしまう」ので「音は一切必要ない」と語っている。
時代を超えて私たちを刺激し、新たな発見を呼び起こす、動く絵画·映像のグラフィックアート。ブラッケージの『DOG STAR MAN』を体験せよ! ! ! !
大竹伸朗(画家)
旧石器時代、一人の人類が石器ナイフの替わりに16mmカラーフィルム入り石器カメラを創ってしまっていたら、だれかがきっとこんな映像を撮ったにちがいない。映像を眺めながら、自分の感覚が光の粒と化し、内に外にめまぐるしく飛び散るのを感じた。丘の上に座し、遠くマグマ噴き出る火口を眺める原子人”ブラッケージの姿がなぜか脳内を横切る。
宇川直宏(マムンダッド·プロダクションズ主宰)
MiniDVとマッキントッシュ、そしてアフターエフェクツとプレミアさえあれば誰もが“自称デスクトップ·ブラッケージになってしまえるこの御時世に、本家による『ドッグ·スター·マン』完全版が劇場公開されるという…。こ、これは事件である!! テクノロジーに依存した陳腐でお手軽なコンピューターグラフィックスが蔓延する現在、40年前からフレッシュなエクスペリメンタル汁が滴って止まないブラッケージの偉業に触れることの意義は限り無い….。そう、全ての映像表現は暗黙のまま『ドッグスター·マン』に感染していたのである。
監督:スタン・ブラッケージ
78min color silent 1961-64年 アメリカ映画
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