それから
今、新たなステージに突入した映画監督と女優の幸せなコラボレーションから生まれた人間ドラマの最高傑作
ロベルト·ロッセリーニとイングリッド·バーグマン、ジャン=リュック·ゴダールとアンナ·カリーナ、小津安二郎と原節子 語り継がれる映画監督と女優の名コンビは、数々の名作を世に残してきた。そして第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『それから』は、その系譜に連なる作品として、熱い注目を浴び、惜しみない拍手が送られた公式記者会見で、主演女優キム·ミニに愛情をこめた最高の賛辞を贈った名匠ホン·サンス。『正しい日間違えた日』でキム·ミニと運命的に出会い、続く液の浜辺でひとリでは、ベルリン国際映画祭主演女優賞の栄冠をもたらした。本作では、キム·ミニに自然体の魅力あふれるヒロインを託し、ホン·サンスが描き続けてきた男と女の可笑しみは、圧倒されるほどの美しいモノクロームの世界で更に冴え渡る。ヨーロッパが絶賛してきた恋愛映画の名手は、新たなミューズと共にまた一つ名作を世に送りだした。
何のために生きるのか?
そこはかとなく漂う醒めたユーモアがままならぬ人生を希望に変える
妻に浮気を疑われているボンワン社長の出版社に勤めることになった新入社員アルムは、出勤初日に妻から不倫相手だと勘違いされ、大迷惑。さらに元社員の愛人もひょっこり戻り、思わぬ騒動に巻き込まれるが 。キム·ミニが演じるアルムは理不尽なとばっちりを受けても、醒めた視点を持ち、動じない。妻と愛人に挟まれ、諦めることを鎧代わりにしているボンワンに、「何のために生きるのか?」と率直に問いを突きつけ、自分はこの世界を信じていると揺るぎがない。騒動の中心にいながらも肩の力を抜いているそんなアルムの生き方は心地良さに溢れている。
家に帰りたくないある男の生活を観察したことから生まれた本作には、どこか生きづらい世の中にこそ必要とされるそこはかとないユーモアが漂う。ホン·サンスは、最後に登場する夏目漱石の本『それから』を、映画の原題に与えた。騒動のそれからが語られるラストではままならぬ人生にも清々しい一瞬があることを見せてくれる。
監督:ホン・サンス
脚本:ホン・サンス
撮影:キム・ヒョング
編集:ハム・ソンウォン
配給:クレストインターナショナル
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