谷内六郎の宇宙 六月二日
谷内六郎の宇宙
天野祐吉
谷内六郎を知らない人がふえた。三十代から下の人はほとんど谷内さんを知らない。
その点、年配の人はよく知っている。「週刊新潮」の表紙を、創刊以来、四半世紀にわたって描きつづけた人だから、知らないほうがおかしい。が、年配の人たちが谷内さんに対して抱いているイメージは、”郷愁”や”メルヘン”の画家である。それも谷内さんの一面だが、ほんの一面でしかない。
その谷内さんが亡くなって、二十年がたった。で、あちこちで、この画家が遺したものがいかに大きいものだったか、その再評価の動きが起きている。そんな動きのなかで、ぼくも谷内さんが遺した画文を全三冊に編集·刊行する仕事をしたのだが、谷内さんを知らない人のために、その本に寄せてくれた二人のアーチストの言葉を紹介しよう。
多摩美術大学上野毛キャンパス講堂「谷内六郎さんは、ただの童画家ではない。人間の底の人が見たくない、恐ろしい闇に亀裂を入れ、そこから真赤な臓物を引き出す芸術家である」(横尾忠則さん)「黄金色に染まる夕焼けの空の向こう、静かに迫り来る優しい闇の中。そのまた向こうに広がる薄白い空の中に、僕はいつでも忘れられないあの人の絵を見ている」(奈良美智さん)文化の焼野原になってしまったいまの日本が、いちばん取り戻さなければいけないものの一つが、谷内六郎の宇宙ではないか。
東急大井町線·上野毛駅三分(お車での来場はご遠慮ください)
主催:多摩美術大学 後援/多摩美術大学校友会·世田谷区教育委員会
定員/五00名
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