江戸の異国趣味
南蘋風(なんびんふう)大流行
18世紀江戸絵画に吹き込んだ新しい風
享保16年(1731)、長崎に一人の中国人画家がやっ
てきました。彼の名は沈南蘋(しんなんびん)(1682~1760~?)。彼の画風は本国の中国ではやや時代遅れになりつつありましたが、その精緻な描写と濃密で華麗な彩色により、当時の日本絵画に非常に大きな影響を与えました。直弟子熊斐(1712-1772)を経て長崎から上方へ、そして江戸へと南蘋の画風は広まりました。折からの博物学の流行もあって写実的な描写が喜ばれたのです。
その影響は「長崎派」と称される南蘋風を専らにした画家に限りません。奇想の画家として近年注目を集めている伊藤若冲(1716-1800) も南蘋風を通過して自らの画風を築きました。写実的でかつ装飾的な画風によって近代日本画の源流となった円山応挙も若い時期南蘋の画風に学びました。日本における銅版画の祖、司馬江漢も文人画家·俳人として知られる与謝蕪村も一時的には南蘋風の絵を描きました。洋風画のさきがけである秋田蘭画も強く南蘋風の影響を受けています。松平定信,增山雪斎といった大名たちも南蘋風の作品を描きました。秋田蘭画の主要人物の一人、佐竹曙山も大名です。
南蘋風の作品が多く残っているということはそれだけ支持されたということです。一番身近な「異国」である中国の雰囲気を伝える沈南蘋の画風。ときにはもう一つの異国オランダへの興味関心とも接近します。
本展覧会は沈南蘋の画風が江戸時代の絵画にもたらしたものを総点数137点で検証する試みです。大名·旗本といった殿様たちが熱心に取り組んだのも興味深いところです。
主催/千葉市·千葉市美術館
共催/財団法人
自治総合センター
お問い合わせ先/043-227-8600 (ハローダイヤル)
ホームページ/http://www.city.chiba.part
- SNS