ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ

信藤三雄のグラフィックは、どこか「不真面目」の味がすると睨んでいるのである。誤解なきよう、信藤さん自身は、いたってマジメな紳士です。だが、ディレクションをしたり、 写真を撮ったり、手書きの文字を書き込んだりしてワタシたちの目に飛び込んでくるグラフィックや映像には「不真面目」が潜んでいる。
 ポップな音楽には、そのわかりやすさを裏切るような意匠を凝らす。オルタナティヴなサウンドはポップにパッケージ化。泥臭さには洗練を。理論よりはインスピレーション。だからこそデザインのスタイルもその時々で自在に変わる。時として引用も厭わないので、「初見の既視感」のようなものを呼んでくることもある。そんなイメージのコラージュにニヤッとすれば、そこは信藤ワールド。「遊び心」という便利な言い回しがあるけれど、数千点に及ぶ作品群を前にしてみれば、そんなことは言っていられない。仕事なのだ。信藤さんのセンスをいち早く認めたイラストレーター、湯村輝彦さんに「ヘタウマ」という言葉があることに倣えば「不真面目マジメ」とでも呼びたいような、物凄い「質と量」。
 今回の「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」は、その膨大な信藤ワールドが圧縮陳列される予定である。常識的な回顧展であれば、時系列順やアーティスト別に整理するところだが、信藤さんの仕業なので、たぶん、恐らく、きっと、そうはならない。そうはならないかもしれないけれど、「時代」は確実にそこにある。ユーミンこと松任谷由実との仕事に始まって、小西康陽と出逢ったピチカート・ファイヴ、フリッパーズ・ギター、オリジナル・ラブ、サザンオールスターズ、Mr.Children、高橋幸宏、矢野顕子、MISIA、コーネリアス・・・・・(あげているとキリがないので略/そして敬称略)・・・・と、80年代のジャケット・デザインから現在進行中のプロジェクトまで、信藤三雄は、この時代の音楽(&メディアとデバイス)と併走してきた。
 故・川勝正幸は、その様を「ミュージシャンと一緒に走っている勢いがデザインにもある。要するに同時代性を感じさせる※」と記している。
 鑑賞する、というよりは、その「コンテムポラリー」をもう一度走り抜ける・・・・・・そんな空間になるに違いないと睨んでいるのである。

渡辺祐(編集者)

会期:2018年7月14日(土)~9月17日(月・祝)
会場:東京都 芦花公園 世田谷文学館
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)
料金:一般800円 65歳以上・高校生・大学生600円 小・中学生300円 障害者手帳をお持ちの方400円
主催:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷文学館
特別協力:ホワイトブリーフ
協力:金羊社、ドゥ・ザ・モンキー、平凡社
助成:芸術文化振興基金
後援:世田谷区、世田谷区教育委員会

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